岐セン、一般向け強化
過去記事持続可能ブランド認知度向上へ 縫製キット、6月発売
【2022年04月23日(土) 岐阜新聞 朝刊】
染色加工の岐セン(瑞穂市牛牧、後藤勝則社長)は、一般消費者向けのサステナブル(持続可能)ブランドに縫製キットを加え、自社商品のラインアップを拡充する。6月に電子商取引(EC)サイトで取り扱いを始める。生地に好みの写真やイラストをインクジェット印刷で転写する完全受注型サービスも同時に立ち上げ、ブランドの認知度向上につなげる。
縫製キットは、長期間倉庫に保管されている生地を活用した商品。長引くコロナ禍による巣ごもり需要で、手芸キットなど手作り製品の市場が活況であることに着目し、商品化する。
第1弾としてエプロン、ポーチ、エコバッグが作れるキット3種類を発売、生地のほかボタンなどの付属品も付ける。3月に愛知県一宮市内で行われた販売会で試作品を発表し、好評を得たという。
5月にもインクジェット印刷機をそろえ、一般販売に備える。ECサイトでは同技術で転写可能なマグカップも扱う。担当者は「インクジェット印刷機の導入で、企業のノベルティグッズの受託製造も提案できるようになる。多角的にブランドを発信していきたい」と語った。
新たに展開する縫製キットに含まれる生地の試作品と、同時に展開するマグカップ
ブランドはサステナブルをテーマに、一昨年に立ち上げた「ecomo class(エコモ・クラス)」。これまで、抗菌・抗ウイルスといった加工技術を施したエプロンなどの縫製済み商材を展開してきた。
最新染色機、水量を低減
環境に優しいブランド開発
【2022年05月20日(金) 岐阜新聞 朝刊】
染色に使った後の排水量が多く、エネルギー多消費型で、環境負荷の高い産業といわれてきた染色業界。持続可能な開発目標(SDGs)が世界的な取り組みになる中で環境負荷を低減しようと、岐セン(瑞穂市牛牧)は製造工程における省エネ、排水の低減、新しい加工技術の開発を進めている。
染色の工程で使う水の量を低減できる最新の染色機=瑞穂市牛牧、岐セン
国連がSDGsを提唱した2年後の2017年秋、パリの見本市で後藤勝則社長(64)ら幹部は目を見張った。非フッ素の加工材など環境に配慮した商材がもてはやされていた。欧州市場は環境に優しい加工技術へのニーズが急速に高まっていた。今後、欧州向けはサステナビリティ(持続可能性)がトレンドになると直感した。「エネルギー削減は利益面にも寄与する。社内でも挑戦してみようという空気になった」といい、18年から取り組みをスタートした。
製造工程では、使用する水や薬剤を低減できる染色機への切り替えを進める。昨年までに導入した最新式の5台は、従来比約1割の水量を減らすことができる。染色機は約40台あり、今後も更新期に合わせて切り替えていく。「環境負荷の低減につながる設備投資は、染色加工業の社会的使命」と力を込める。
新たな加工技術の開発にも取り組む。20年には持続可能性をテーマにした自社ブランド「エコモ」を立ち上げた。植物由来の撥水(はっすい)剤を使った「コモガード」は、フッ素を使わないため環境への負荷を抑えられるほか、油汚れが落ちやすい加工「コモクリーンOP」は、使用後の洗濯で簡単に汚れが落ちるため、水の使用量を少なくできる。多種多様な効能、加工を施したエコモブランド商品は、現在8種類まで増えた。
長期間倉庫に保管されているデッドストックと呼ばれる加工済み生地の再利用にも着手。自社製のエプロンやエコバッグに加工、電子商取引(EC)サイトで販売している。愛らしいデザインが印象的な自社商品の企画開発には、若手社員が主体的に関わっており、担当者は「商品を購入することで、環境負荷低減の取り組みに参画してもらいたい」とアイデアを出し合っていた。後藤社長は「日本の市場ではこれまで少なかったが、SDGsへの意識の高い消費者は確実に増えている。当社も消費者に寄り添って、環境負荷の一層の低減に努めていく」と力を込める。
持続可能性をテーマにした自社ブランド商品の企画会議で、意見を出し合う若手社員=同
【会社概要】1943年、県内11社の染色業者が合併し、岐阜県整染として設立。岐阜整染を経て、73年から現社名。ファッション衣料やユニホーム、官需制服、中東の民族衣装向けの染色加工を手がける。2014年には子会社の岐阜バイオマスパワーが、間伐材を利用した木質バイオマス発電を始めた。従業員数は約240人。21年3月期の連結売上高は48億500万円。