郷土知りSDGs学ぶ

過去記事
住民に交じって「長範みそ」を仕込む児童たち=大垣市上石津町下山、時まちづくり会館

長範みそ造り→フードマイレージを削減/ソバの栽培→地域存続へ耕作放棄地活用

【2023年03月20日(月) 岐阜新聞 朝刊】

 滋賀、三重の両県に接する岐阜県南西部の大垣市上石津町。その中でも県境の時地区に、同町堂之上の時小学校はある。山に囲まれた同地区は、住民による地域の文化を生かしたまちづくりが盛ん。子どもたちは住民たちと積極的に関わり、製炭やみそ造りなどを教わる。地域で昔から続けられてきた営みを、持続可能な開発目標(SDGs)と関連づけながら学んでいる。

 1月末。同校のほど近くにある集会所「時まちづくり会館」の調理場は熱気に包まれていた。時地区に伝わる地みそ「長範(ちょうはん)みそ」の仕込みが行われ、5、6年生が住民に交じって作業を体験。ゆで上げた大豆をつぶし、地元の米で作った米こうじと混ぜていく。徐々に粘り気を増すため、こねるのは重労働。6年金森祐仁(ゆうと)君(12)は「給食でも食べていて、おいしい。大豆と米、塩だけでみそができるなんて驚いた」と話す。

住民に交じって「長範みそ」を仕込む児童たち=大垣市上石津町下山、時まちづくり会館

住民に交じって「長範みそ」を仕込む児童たち=大垣市上石津町下山、時まちづくり会館

だけでみそができるなんて驚いた」と話す。
 長範みそは、大垣市との合併を機に発足した住民組織「時まちづくり活動推進実行委員会」の長範みそ部会のメンバーが、製法を知る住民に聞き取りし、2013年に復活させた。桑原政明部会長(63)は「地元でみそを手造りしていることを、大人になっても覚えていてほしい。そのためには子どもたちに体験してもらうことが一番」と語る。
 同校では、古里の時地区に学び、主体的に地域に関わる子どもの育成を目指してきた。地区の魅力を、豊かな自然、長い歴史、多様な文化・産業の三つに大別し6年間で学ぶ。軸になっているのがSDGsの観点だ。例えば、みそ造りは地産地消によるフードマイレージ削減への取り組みとつながり、児童が体験するソバの栽培は耕作放棄地を活用するなど、地域を存続するための方策の一つ。総合学習を担当する篠田耕佑教諭は「SDGsは新しい言葉だが、時地区の人たちが昔から自然と実践してきたこと。そんな地域に住んでいることを誇りに思ってほしい」と期待する。
 学校活動でお世話になった地域の人たちに感謝する会が先月、同校で開かれた。学習発表の場も設けられ、子どもたちはパワーポイントを使ったり、イラストに描いたりとさまざまな方法で学んだことを表現した。6年生は、学んだことを基に自身がどういう姿でありたいかを言葉にした。6年伊藤颯良(そあら)さん(12)は、豊かな自然を生かした地域の取り組みに着目。「自然を守るため、私もごみ拾いや家での節電をしたい」と身近な例を語った。

時地区で学んだ持続可能な取り組みについて発表する児童=同町堂之上、時小学校

時地区で学んだ持続可能な取り組みについて発表する児童=同町堂之上、時小学校

 このように活動は続けられてきたが、時地区から学校がなくなる。24年度に同町の小中学校計5校が統合、義務教育学校になることが決まっている。統合後も地域での学びを継続するため、バスで時地区を回ることを想定したオリエンテーリングコースづくりを進めている。髙見美智子校長は「時地区では住民が熱意を持ってまちづくりに取り組んでいる。少子高齢化による先細りではなく、この地域には可能性が広がっていることを子どもたちに気付かせたい」と願っている。

戻る