朴葉ずし食べSDGs貢献

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朴葉ずしの魅力をSDGsの観点から語る野尻眞さん(右)と吉川俊行さん=加茂郡白川町坂ノ東、白川病院

岐阜の夏の味「エコな食べ物」再認識

【2021年06月30日(水) 岐阜新聞 朝刊】

 夏の始まりを告げる岐阜の郷土料理の一つ、朴葉(ほおば)ずし。エコな食べ物である朴葉ずしは、国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)にも通じると、白川病院(加茂郡白川町)院長の野尻眞さん(72)、旅館吉泉館竹翠亭(下呂市)社長の吉川俊行さん(86)は話す。最盛期の今、ただおいしいというだけではなく、SDGsを考えながら朴葉ずしを頬張ってみては。

朴葉ずしの魅力をSDGsの観点から語る野尻眞さん(右)と吉川俊行さん=加茂郡白川町坂ノ東、白川病院

朴葉ずしの魅力をSDGsの観点から語る野尻眞さん(右)と吉川俊行さん=加茂郡白川町坂ノ東、白川病院

 ちらしずしをホオノキの葉で包む朴葉ずしは、飛騨や中濃、東濃地方で主に作られる。そもそも畑や山林での仕事の合間に食べる携帯食だった。
 野尻さんと吉川さんは40年来の知人で、それぞれが幼少の頃からなじみ深い朴葉ずしを広めたいと考えてきた。折しも東京五輪を控え、国内だけでなく、世界に魅力を伝えられたらと思い描く。
 野尻さんはまず、環境保全の観点から語る。朴葉ずしには食器が要らず、箸も必要ない。プラスチックごみが出ず、食べた後で朴葉は自然に返る。日本調理師会の副会長も務めた吉川さんは、食材に注目する。朴葉ずしの具は飛騨ではベニマス、東濃ではヘボ、といったように地元で手に入るので地産地消になる。これらは、SDGsの持続可能な消費と生産に関する目標12「つくる責任 つかう責任」に沿う。マスやヘボ、朴葉が適正に育つことは、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」につながりそうだ。
 吉川さんは、ベニマスについて「昔はダムがなかったので飛騨川を遡上(そじょう)できた」と話す。現代では北海道や海外産のマスが流通しているが、元々は地元の川を遡上するマスを使っていた。「長良川河口堰(ぜき)は必要だったのかどうか、というところまで考えていく機会にもなる」
 栄養面では、シイタケやアサリのつくだ煮、キャラブキ、錦糸卵など、動物性タンパク質、野菜、炭水化物を一挙に取れる“完全食”といえる。さらに朴葉そのものの価値も見つめ直す。吉川さんは、殺菌作用や風味の良さのほか「皿に朴葉を載せ、その上に料理を盛り付ければ季節感が楽しめるだけでなく、皿洗いで洗剤の量が減る」と利点を強調。野尻さんによると、朴葉は漢方薬「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」に用いられ、喉のつかえ感や不安神経症、神経性胃炎などに効き、鎮静作用もあるという。ホオノキは成長が早く植樹後3年もすれば葉が大きくなるといい、朴葉の価値が高まれば需要が伸び、葉を加工するなどで雇用が生まれる、というところまで話は広がる。

吉泉館竹翠亭の朴葉ずし。具材はベニマス、シイタケ、アサリ、ショウガ、木の芽。日によって食材は変わる

吉泉館竹翠亭の朴葉ずし。具材はベニマス、シイタケ、アサリ、ショウガ、木の芽。日によって食材は変わる

 吉川さんは「伝統食を受け継ぐことは、地域の発展にもつながる」と話し、野尻さんも「健康寿命を延ばすことにもなる」と応じる。2人は「各産地が集まる“朴葉ずしサミット”を開けたら」と夢を膨らませている。
 吉泉館竹翠亭では7月中旬まで朴葉ずしを提供。取り寄せにも応じる。問い合わせは吉泉館竹翠亭、電話0576(25)3327。

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