環境考えるツアー提供 水辺の文化に触れてもらう

清水さん=右

SDGs岐阜 岐阜乗合自動車(岐阜市)

輸送効率に優れ、二酸化炭素排出量の削減に寄与するとして、利用促進がうたわれる公共交通。岐阜市を中心に路線を巡らせる岐阜乗合自動車(岐阜バス、岐阜市九重町)では、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、取り組みを深化させている。今年はSDGsを切り口にしたバスツアーを新たに企画した。8、9月に三つのコースを設定し、参加者に水辺の環境への興味・関心を持ってもらうなどし、SDGsへの理解を深めることが狙いだ。
 「ハリヨは生息域で個体に違いが出るのか。知らなかったな」。コースの一つに組み込まれている世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふと河川環境楽園自然発見館(ともに各務原市)を下見して感嘆の声を上げたのは、募集型バスツアー「ながら会ツアー」を担当する清水達郎さん(37)。両施設では1時間ほど参加者が見学しながら、クイズ形式の謎解きに答える形で、身近な水辺環境について考えてもらう。

募集型バスツアー「ながら会ツアー」


 両施設の見学前には、清流長良川あゆパーク(郡上市)で鮎のつかみ取り体験を楽しみ、美濃和紙の里会館(美濃市)では紙すき体験をするなど、水辺の文化にも触れられるメニューにした。清水さんは「親子で参加してもらい、帰宅後にSDGsが話題に上れば、企画の意義が一層高まる」と目を輝かせる。
 別のコースでは名古屋鉄道の犬山検査場(愛知県)の見学や、中部国際空港駅(同)での切符発券体験などができる「お仕事体験ツアー」や、バスの座席などを製造する三菱ふそうバス製造と天龍工業(ともに富山市)を巡る「工場見学ツアー」を設定し、地域の産業への理解を深める。清水さんは「両コースともに、当社ならではの視点でSDGsの発信ができる」と語った。

清水さん=右


 一方、環境負荷低減に向けても力を注ぐ。10年以上前にハイブリッドバスを導入し、現在は約10台が運行している。燃費効率の良い運転操作も心がけ、2022年3月期の燃料費を前期よりも2千万円削減した。営業管理部の川添英樹さん(52)は「エコ意識の高い運転は、毎年燃費の目標を設けることで、全社的な取り組みになっている」と強調する。瀧修一社長(60)は「SDGsの各項目の共通目標である地球環境の保全のために、バス会社が貢献するのは当たり前のこと。今後はさらに一歩踏み込み、電気バスの導入を検討していきたい」と前を見据えた。
(富樫一平)

 【会社概要】1943年創立。路線バス事業は2004年に名古屋鉄道から岐阜高富線を路線譲受したほか、05年までに岐阜市営バスから路線を引き継ぐなどし、22年4月時点で52路線を運行する。17年に岐阜バス観光と岐阜バスコミュニティを吸収合併した。従業員数は約640人。22年3月期売上高は約56億円。

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