地域材の利益、森に還元 産学官協議会で需要つかむ

県産や国産の木材を使った家具

SDGs岐阜 板蔵ファクトリー(瑞穂市)

昨年、木材価格が世界的に高騰した「ウッドショック」。国内でも深刻な木材不足に陥り、改めて業界全体のサプライチェーン(供給網)を考え直すきっかけとなった。米国や中国で住宅ブームによる木材需要が高まり、日本への輸出が減少したことで、住宅や家具の価格が高騰。代替の国産材も急激な需要の高まりに対応しきれず、国内の供給体制の底の浅さを露呈する格好になった。
 「岐阜は木が豊かな国。木材がなくなることは本来あってはいけない。業界全体を変える必要がある」。住宅建材販売を手がけるヤマガタヤ産業(羽島郡岐南町)の子会社「板蔵ファクトリー」(瑞穂市稲里)の吉田香央里社長(38)は、こう語る。

ヤマガタヤ産業(羽島郡岐南町)の子会社「板蔵ファクトリー」(瑞穂市稲里)の吉田香央里社長(38)


 2018年に誕生した同社は、素材にこだわる木工工場として、オーダーによる家具製造を売りにしている。業界では後発ながら、定評のある職人の技術力を最大限に生かすため、吉田社長は「会社が存在することで地域にいい影響を与えられなければ、残っていくことはできない。社内で議論し地域材をやっていくことに決めた」と振り返る。
 世界の150樹種以上を扱いながらも、3年前から飛騨地域の森に自生する広葉樹を使い始めた。節の多さといった品質や価格の面から言えば、米国材と比べて決して良くはないが、あえて個性として売り出すことにした。近年の持続可能な開発目標(SDGs)や環境意識の高まりが追い風になり、「県産や国産の木材を使った家具」としてのストーリーが評判を呼び、商機をつかんだ。

県産や国産の木材を使った家具


 豊かな森を維持するためには、間伐といった、ある程度の手入れが必要になる。「育てる」「使う」「植える」の循環が森林の持続につながるため、林業や木材メーカー、工務店などのサプライチェーンを強固にすることが重要となる。岐阜県は森林率全国2位を誇るが、現状は県産材が売れて森に還元される収益が少ない。状況を変えようと、19年4月に県内の産学官の関係者が集まり、ぎふの木ネット協議会(事務局・ヤマガタヤ産業)が発足。吉田社長も当初から中心メンバーの一人として関わってきた。
 協議会では、構造材や内装材、家具、小物でも、県産材を使おうと考える人を増やすための取り組みを続けてきた。発足直後、新型コロナウイルスの感染が拡大したが、オンライン上でできることを考え、県産材を使ったモデルハウスをインターネットサイトでPRする「デジタル展示場」のサービスを実施している。

デジタル住宅展示場「モクタウン」イメージ図 https://mokutown.jp/gifu/

デジタル住宅展示場「モクタウン」イメージ図 https://mokutown.jp/gifu/


 現在は、需要の変化に対応しやすくするため、協議会に参加する企業や団体の連携体制の整備に力を入れている。供給者側へ需要に関する情報を吸い上げるデマンドチェーンの考え方だ。吉田社長は「需要を吸い上げ、森に伝える。皆が使いたいものを作って、生産を増やしていく」と、産業と環境の好循環を生み出す決意を語る。

【会社概要】2018年に造作家具メーカーの伊藤木工(瑞穂市稲里)を、ヤマガタヤ産業が子会社として引き継ぐ形で創業。オーダー家具の製造をはじめ、キッチンやフローリング、木製ドアの製造、一枚板の加工販売などを手がける。従業員数は15人。

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