建設業、次世代につなぐ 園児ら現場見学、魅力を発信

長瀬土建 長瀬雅彦社長(62)

SDGs岐阜 長瀬土建(高山市) 

2021年10月。高山市上野町の中部縦貫自動車道の道路建設現場に、建設車両を描いた絵が並んだ。保育園児が描いたショベルカーなどの大きな絵が、足場の枠にずらり。見学に来た子どもたちの表情に笑顔があふれ、普段は重機の音が響く工事現場は明るい歓声に包まれた。

 長瀬土建(高山市久々野町久々野)が、地元の久々野保育園児を対象に行った工事現場見学会の一コマ。普段は入ることができない建設中のトンネル内で工事の説明を受けたり、建設車両に乗って記念撮影をしたりと、園児にこれ以上ない体験を提供した。長瀬雅彦社長(62)は「子どもたちはすごい喜んでくれる。現場で説明する社員のやりがいにもつながっている」と語る。

高山市上野町 中部縦貫自動車道の道路建設現場。保育園児が描いたショベルカーなどの大きな絵が並ぶ

 同社では、中高生を対象とした見学会は以前から行ってきた。「仕事のノウハウを次世代につないでいくため、子どもたちへの教育が必要と感じている」と長瀬社長。見学会はSDGsの17の目標の一つ「質の高い教育をみんなに」を体現した取り組みの一つ。未来を担う子どもたちに、建設業の魅力を感じてもらおうとの思いがある。

 5年ほど前からは小学生、2年前からは園児と対象年齢を下げて実施。建設車両に興味を持ちやすいのが園児や低学年の児童と考え、「その頃に見学会を行うことで、建設業で働く人たちはかっこいいとインプットされる。それが子どもから親に伝わり、建設業が魅力ある業界だと理解されることにもつながる」と語る。会社の会議室に貼られた子どもたちのお礼のメッセージ「みんなのために工事をしていてすごいと思った」「また現場に行ってみたいと思った」が、取り組む意義を証明している。

長瀬土建 長瀬雅彦社長(62)

 社内でもSDGsの取り組みを積極的に推進している。働き方改革が求められる建設業界で、19年から週休2日制の導入に着手。従業員は業務の効率化を考えて実践し、会社側は収入低下にも配慮して全社員の給与体系を改めた。20年度には県のワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業の認定を取得。長瀬社長は「難しいことをしているという認識はないが、今では従業員みんなが、特別な意識をしなくても自然にSDGsの取り組みができる状況になっている」と胸を張る。

【会社概要】1959年9月創業。土木、舗装、解体工事などを手がけるほか、2010年ごろから林業にも参入。近年では、21年の豪雨災害で崩落した下呂市の国道41号の復旧や、中部縦貫自動車道の建設などを担う。従業員は約30人。20年度から毎年、健康経営優良法人の認定を受け、4月創設のSDGsの有識者や取り組み実践者を派遣する県の「SDGs講師派遣制度」で講師も務める。

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