地域の森林整備は使命 人材維持へ多様性ある職場
SDGs岐阜 付知土建(中津川市)
市域の約8割を森林が占める中津川市に根を下ろして75年を迎える付知土建(同市付知町)は、一般土木建築だけでなく、国有林の維持、管理を担う林業や治山事業も手がけており、なりわいそのものが持続可能な開発目標(SDGs)の実現に寄与している。本業以外でも、2010年に森林保全活動を行う林野庁などのフォレストサポーターズに登録。今年も8月に岩村城跡(恵那市岩村町)付近の草刈りなど美化活動に取り組んだ。三尾秀和社長(66)は「緑豊かなこの地で創業した企業として、森林整備には使命感を持っている」と語る。
写真/イチョウの木の手入れをする社員。林業を通じ、地域の緑地保全にも貢献する=中津川市付知町【2022.11.18岐阜新聞掲載】
チェーンソーを片手に道なき道を進む-。このような林業に抱く一般的なイメージ通りに男性社員が多い中でも、近年は女性や外国人の労働者を積極的に雇用し、多様性のある職場環境の実現を目指している。
中津川市川上の川上川の復旧治山工事現場。先輩職人の指示を受けながら、作業を進める女性職人の姿があった。今年4月に入社したばかりの伊藤妃与乃さん(17)=多治見市出身=。重機の操作など主要な仕事は専門資格を持っていないためまだできないが、資材を運ぶなどの補助で活躍する。5人が働くこの現場では唯一の女性だが、ベトナム人特定技能実習生のホアン・クオック・バオさん(29)もおり、互いに助け合いながら、現場は和気あいあいとした雰囲気に包まれている。「駆け出しの私ができることには限りがある。だが道具の片付けや近くの詰め所をきれいにするなど、女性目線で現場に良い影響をもたらしたい」と意欲を燃やす。
写真/治山工事現場で、新堤の枠組みを作る伊藤妃与乃さん(手前)。外国籍の作業員も含め、多様な職場環境づくりが進む=中津川市川上
その伊藤さんが入社するきっかけとなったのが、同社のインスタグラム。1年前から三尾隆介常務(38)が各現場の監督で訪れた際などにアップしている。同社には現在、伊藤さんのほかに女性職人1人と外国人3人が働いており、その活動もインスタグラムで発信している。三尾常務は「多様な職場を実現し、発信することで、業界全体の課題である労働力不足という問題に挑戦したい」と語る。
ただ課題も多い。女性専用トイレの設置率が低かったため、本年度から資材置き場など詰め所での設置を順次進めている。また今後は情報通信技術(ICT)機器の導入も進め、作業の効率化や安全性の担保をしていく必要もある。三尾常務は「多様性ある職場をさらに推し進めるため、努力を続けていく」と力を込めた。
(富樫一平)
【会社概要】石職人だった初代・三尾隆夫氏が独立し、1947年創業。土木をメインに、林道整備や治山事業も手がける総合建設業として、県内を中心に事業を展開。1級土木施工管理技士の有資格者は8人在籍。従業員数は36人。2022年8月期売上高は5億5千万円。