働き手の職域拡大推進 障害者や外国籍、雇用率高く

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フィリピン国籍のオマナ・メルさん(26)右

仕事中、食事中、スポーツ観戦に風呂上がり―。生活シーンを表した絵文字「ピクトグラム」を並べ、パソコン画面を見て試行錯誤するのは、入社2年目でフィリピン国籍のオマナ・メルさん(26)。自社製品のクラフトコーラを販売する電子商取引(EC)サイトの制作を任され、10月の開設を目指す。「ピクトグラムなら『風呂上がりにはこのコーラが合う』と一目で分かり言語を問わない」とのアイデアからだ。

フィリピン国籍のオマナ・メルさん(26)右

 自動車部品製造の東和組立(美濃加茂市)は昨年から、クラフトコーラの製造を始めた。30年以上続ける障害者雇用を推進するため、働き手の職域拡大の一環。スパイシーな茶色、レモンなど酸味を加えると紫色に変化する青色、ハーブの一種ローゼルの赤色の計3種類を製造しネット販売しようと準備する。

スパイシーな茶色、レモンなど酸味を加えると紫色に変化する青色、ハーブの一種ローゼルの赤色の計3種類

 中でも青色は、ハーブの一種「バタフライピー」を主原料に使う。バタフライピーの活用を研究する加茂農林高校(同市)と今年、共同研究開発の契約を結んだ。可茂特別支援学校(同市)ともハーブ栽培や収穫での連携を視野に、福・学・産連携による地元開発モデルにしようと模索する。

 障害者雇用では、本人に働く意欲があっても、業務内容が合わずに採用できない場合がある。このため同社の幹部らが2011年にNPO法人プラス・ワンを発足し、一般就労に向けて段階的に訓練する場を設けた。就労継続支援A型事業所として15年、冷凍生ギョーザ「えむちゃん餃子(ぎょうざ)」の製造を開始。市のふるさと納税返礼品に採用されるなど人気を集めており、コーラはその第2弾を狙う。

 リーマンショックの影響で09年に外国人派遣社員を大量解雇せざるを得なかった反省から、13年以降、障害の有無や性別、国籍に関係なく、正社員雇用を前提に採用する。業務の見える化を進めるため、公益財団法人ソフトピアジャパン(大垣市)の指導で、身の丈IoT(モノのインターネット)に取り組み、知的障害者に作業のタイミングを光で伝え、熟練者が全数検査していた検品に画像診断を導入して未熟者でも担当できるような工夫を繰り返すうち、結果として障害者、外国籍、女性も業務改善に取り組む風土が生まれた。

「SDGsの理念『誰も置き去りにしない』職場をつくり、地域社会に貢献したい」と話す林佳寿彦社長(61)

 障害者の実雇用率は18%ほどで、民間企業に義務付けられた法定雇用率2・3%の7・8倍と抜きん出るほか、従業員に占める外国籍や女性の比率も、ともに30%超と高い。林佳寿彦社長(61)は「SDGsの理念『誰も置き去りにしない』職場をつくり、地域社会に貢献したい」と話す。

 【会社概要】1957年、オートバイ部品を組み立てる東和製作所組立部として創業し、69年に親会社から分社独立。自動車の操縦で安定性を高めるショックアブソーバー(衝撃吸収装置)の組立、塗装、梱包を手がける。約30年にわたり、障害者や外国人の正社員雇用に取り組む。2020年度は多様な人材を雇用し、経営成果につなげている企業を選定する経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。従業員数は約150人。22年4月末時点での売上高は9億7000万円。

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